リハビリテーション
リハビリ通信

皆さん、こんにちは!今回のリハビリ通信は、リハビリテーション科の言語聴覚士が担当させていただきます。

 

さて、暦の上では秋を迎え徐々に過ごしやすい気温となり、まさに「食欲の秋」本番を迎えました。旬の食材を味わい、美味しい食事を楽しむことは、私たちの体と心の健康を保つ上で非常に大切です。

 

しかし、「最近、硬いものが食べづらくなった」「食事中にむせることが増えた」と感じることはありませんか?それは、お口の機能の衰えを示す「オーラルフレイル」や「口腔機能低下症」のサインかもしれません。

食べたいものを自由に食べ、豊かに暮らすために、この秋から「食べる力」を守るための対策を始めてみませんか?

1. オーラルフレイル・口腔機能低下症とは?

「フレイル」とは、健康な状態と要介護状態の中間にある虚弱な状態を指します。その中でも「オーラルフレイル」は、**「滑舌の悪化」「食べこぼしの増加」「むせやすさ」といった、口の機能のわずかな衰えを意味します。この状態を放置すると、さらに深刻な「口腔機能低下症」**へ進行し、全身の健康や栄養状態にも悪影響を及ぼす可能性があります。
口腔機能低下症は、以下の7つの項目のうち3つ以上で低下が見られると診断されます。

  1. 口腔衛生状態不良
  2. 口腔乾燥
  3. 咬合力低下(噛む力の低下)
  4. 舌口唇運動機能低下(舌や唇の動きの低下)
  5. 低舌圧(舌で食べ物を押しつぶす・飲み込む力の低下)
  6. 咀嚼機能低下(食べ物を噛み砕く機能の低下)
  7. 嚥下機能低下(飲み込む機能の低下)

 

2. おいしく安全に食べるためのポイント

食事の工夫:噛む力を活かす・栄養をしっかり摂る

① 意識して「噛む回数」を増やす

一口で30回以上を目安に、意識してよく噛みましょう。よく噛むことで、唾液腺が刺激され、消化を助ける唾液の分泌が増えます。唾液は、食べ物をまとめる、口の中をきれいにするなど、重要な役割を果たします。

歯ごたえのある食材を取り入れる

硬すぎるものは避けるべきですが、ある程度歯ごたえや弾力のある食材を選ぶことで、噛む力を鍛えることができます。

【例】 キノコ類、根菜類(やや大きめに切る、少し硬めに茹でる)、新鮮な野菜など。

たんぱく質を積極的に摂る

お口の筋肉も体全体の筋肉と同じように、栄養が必要です。肉・魚・卵・大豆製品・乳製品といったたんぱく質を毎食意識して摂取し、全身の筋力維持・向上に努めましょう。

④ 食事中の習慣を見直す
  • しずつ口に入れて飲み込む
  • 水やお茶で食べ物を流し込まない
  • テレビやスマホを見ながらの「ながら食べ」をしない
  • 一度にたくさん頬張らない

食べる力を鍛える「お口のリハビリ」

ご自宅で簡単にできる、お口の機能を維持・向上させるための体操をご紹介します。

目的体操の例効果
唾液分泌促進唾液腺マッサージ顎の下や耳の下にある唾液腺を優しくマッサージし、唾液の分泌を促します。
舌の筋力強化舌の体操(舌圧訓練)舌を思い切り突き出したり、上あごに押し付けたり、「パ・タ・カ・ラ」などの発音練習(早口言葉)を行います。
飲み込む力強化嚥下体操大きく口を開け閉めする、喉仏を上げて5秒間保つ(ごっくんと飲み込んだ状態をキープ)など、飲み込みに必要な筋肉を鍛えます。
頬・唇の強化頬の体操頬を膨らませたり、すぼめたりを繰り返します。吹き戻し(ピロピロ笛)を使うのも効果的です。

最後に

食事は生命を維持するために不可欠であり、様々な食材を摂取することは私たちの体を作る上で必要です。また、美味しく楽しい食事は、生活の質(QOL)にも大きく影響します。「食べる力」の低下は、ゆっくりと進むため気づきづらく、「オーラルフレイルは全身のフレイルの入り口」とも言われています。この秋、今一度お口の機能や状態を再確認し、より長く健康にお過ごしいただくとともに、実りの秋を心ゆくまで楽しみましょう!