医療関係の方へ
キャリア支援センター座談会

Cross talk 一人ひとりの背景に合わせた支援を

Cross talk 一人ひとりの背景に
合わせた支援を

看護を中心に多職種へと教育支援を広げながら、復職者や技能実習生を含む多様な人材の育成を、病院全体で支えていきます。
メンバー
  • T.Kさん 看護部長
  • Y.Sさん 副センター長
  • S.Hさん 介護士長
  • T.Tさん 副看護部長
01

Cross talk –2024年に発足した「キャリア支援センター」

T.K
私は2022年から看護部長を務めています。2024年4月にキャリア支援センターが設置され、発足当時、センター長を兼務しておりました。
Y.S
現在はキャリア支援センターに所属して3か月目です。医師会病院では長年働いてきたので、職員の顔はほとんど分かります。最近入職した新人さんは分からないこともありますが、多くの職員と顔見知りであることが、今の立場ではとても役立っています。
S.H
私は今の仕事に就くまでにいくつかの職を経験してきましたが、2000年にこの病院に療養病棟ができたことをきっかけに、「介護の仕事がしたい」という思いから採用していただきました。それから24年になります。
今は介護士長として、6名の介護主任を束ねる立場です。キャリア支援センターの一員としては、特に外国人職員の育成に力を入れています。技能実習生もまだ2年目で、いろんなことを手探りでやっている段階ですが、現場の力になれるよう取り組んでいます。
T.T
副看護部長として、新人教育を中心に、病院全体の業務にも関わっています。これまで、一般病棟、回復期リハビリ病棟、老健、療養病棟など、さまざまな部署を経験してきました。
キャリア支援センターでは、新人支援や復職支援、高校生の看護体験など、少しずつ活動の幅を広げています。自分の経験を活かして、次世代の看護師たちの入り口を支えていけたらと思っています。
02

Cross talk –教育の力で人を育て、現場を支える

T.K
最初は看護部の中に教育支援室をつくろうという構想がありました。教育がしっかりしていれば、人は集まってくれる。そんな想いがありました。しかし、院長から「病院全体でキャリア支援をしてほしい」と言われたことをきっかけに、看護部だけにとどめずキャリア支援センターとして立ち上げることになりました。
とはいえ、初めから全職種を一度に対象にするのは難しく、まずは看護部からスタートしました。今はまだ体制が整っているとは言えませんが、少しずつ他部署からも「相談にのってほしい」という声が出てきていて、今後の広がりに手ごたえを感じています。
T.T
キャリア支援センターができたことで、診療部など他職種との連携も少しずつ進みやすくなったように感じています。たとえば、研修の依頼を受けたり、こちらから相談したりする際に、窓口が明確になったことで、調整がスムーズに運ぶようになりました。
設立前から、多職種で集まって小規模な研修会を開くこともしていましたが、そういった取り組みをこれからはセンターを基盤として継続・発展させていければと考えています。
S.H
介護の分野でも、教育は大きな課題です。ただ、介護職は看護と比べると歴史の浅い職種で、明確な教育モデルがあるわけではありません。そこで今は、外国人技能実習生への教育に力を入れ、そこで得た知見を介護職全体へフィードバックしていこうとしています。
実習生の教育は、私たち自身の“教える力”を高める場にもなっていて、実際に指導方法が少しずつ変わってきた手応えがあります。人材確保が難しい状況だからこそ、「育てられる環境」をつくることが本当に大事だと思っています。
Y.S
技能実習生の受け入れは、老健に加え、病院のほうにも配属が始まっていて、職場の空気にも変化が出てきています。彼女たちが真剣に取り組む姿は、まわりの職員にとっても刺激になっていて、こうした動きが、日本の若い人たちにも介護に興味を持ってもらえるきっかけになればいいなと思っています。
03

Cross talk –過去の仕組みを活かし、未来につなぐ

Y.S
今は体制を整えている最中で、既存の仕組みを活かしつつ、立て直しを進めています。最初はしっかり関わることを大切にしつつ、将来的には職員が自らキャリアを動かせるような仕組みにしていきたいです。看護部以外からも教育に関する相談が出てきていて、多職種で支援を考えていく段階に来ていると感じています。
T.K
当院の看護ラダーは全国標準と多少ズレがあり、他院からの経験が活かしきれない面があります。そこで今、共通の枠組みに合わせながら、医師会ならではの要素も組み込む方向で見直しています。転職や異動がある中で、どこでも通用する教育体制を整えることが重要だと思っています。
T.T
これまでの教育の積み重ねを活かしつつ、今の時代に合った形へアップデートする必要があります。とくに管理職向けのラダーなど、これから新たに整えていくべき部分も多く、組織としての責任を持って仕組みづくりに取り組んでいきたいです。
S.H
介護では「キャリア段位制度」という共通の指標があり、当院でもそのレベル2に準拠して教育を進めています。今後はさらに上の段階をどう扱うかが課題ですが、全国どこでも通用する基準を取り入れることで、育成の精度と客観性が高まると感じています。
04

Cross talk –ミスマッチを防ぎ、安心して働ける環境へ

T.K
結婚を機に益田へ移住し、当院で復職を希望する既卒者が増えています。経歴やスキルはさまざまですが、まずは“患者さんを大切にできるか”という本質を大事にしたいと思っています。
最近は、ブランクが長い方に対して、いきなり配属せず、病棟ローテーションやシミュレーション研修を導入しています。採用後、お試し期間のような形で現場に慣れてもらい、ミスマッチを減らす取り組みをしています。
Y.S
長く現場を離れていた方の中には、「もう一度看護がしたい」と思っている方も多いんです。でも不安も大きくて、中には初日に辞めてしまった方もいました。だからこそ今のようなローテーション制度はとても有効だと思っています。
大切なのは“仕事として”ではなく、“看護がしたい”という気持ち。その思いを尊重しながら、復職を支える体制づくりが必要だと感じています。
T.T
やっぱり看護は“人が相手”の仕事なので、患者さんやご家族に自然と心を寄せられる人が理想です。社会人としての基本、コミュニケーション力、そして思いやり。そういった人間的な部分が備わっている人なら、技術面は後から教育で補えると思っています。
教育の仕組みを整えることも大切ですが、それ以前に“人としてどうか”という視点を持つことを、これからも大事にしていきたいです。
05

Cross talk –多様な背景に寄り添い、病院全体で人を育てる

S.H
介護職は多様なバックボーンを持つ人が集まる職種です。技術や知識は教えられますが、人としての柔軟性や感受性はその人自身の土台に関わる部分。大切なのは「変化に対応できる力」です。
教育制度も看護とは異なり、キャリア段位制度などを取り入れつつ、個々の良さを見出し、成長を支える姿勢が求められていると思います。
T.T
新卒の育成にはプリセプター制度を導入していますが、近年は“支援”という言葉の方が現場に合っている気がします。上から指導するというより、横に並んで一緒に考え、支える。そういう関わり方が重要になってきました。
先輩職員にとっては少なからず負担はありますが、人を教える中で自身も成長できる。そうした循環を病棟全体で育んでいく意識が大切だと思っています。
Y.S
長くブランクがあった方が復職する場合、“看護がしたい”という思いがあるかどうかが大きなポイントです。たとえ技術に不安があっても、その気持ちがあれば支援のしがいがあります。
かつて自分が支えてもらった経験があるからこそ、今度は自分たちが支える番。復職者も新人も、誰かの手を借りて成長していける環境をつくることが、今の現場には求められていると思います。