
婦人科腫瘍の中で主な腫瘍は、子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌です。当科ではそれぞれの疾患の早期発見、診断を行っております。手術などの治療については島根大学病院産婦人科と連携しています。

子宮頸癌、異形成の診断
子宮頸癌は、子宮の入り口にある子宮頸部の細胞が、異形成という前がん病変を経て発生します。その原因となるのは性交渉の際に感染するヒトパピローマウイルス(HPV)で、多くの女性が生涯に少なくとも一度は感染していると考えられます。この感染を通じて異形成が発生しますが、多くの場合自然に治癒します。しかし、中には異形成が持続し、数年〜十数年を経て子宮頸癌に進展する場合もあります。
子宮頸癌検診では、癌になる前の異形成の段階で早期発見し、治療することで、子宮頸癌の発症を予防できます。検診は、子宮頸部の細胞診検査で行います。不正出血などの症状がある患者さんはもちろん、定期検診として特に症状がない患者さんにも細胞診検査が有用です。細胞診は内診にて、わずか1分ほどで完了する簡単な検査です。一般的にはほとんど痛みを伴いませんので安心して受けて下さい。
細胞診で異常が出た場合、それだけでは診断はつきません。次に精密検査が必要です。精密検査では、内診にて腟拡大鏡という機器で子宮の頸部を観察し、異常な箇所を切除鉗子で切除(通常数ミリ程度)して、病理検査に提出します。約1〜2週間で確定診断結果がでます。
子宮頸部異形成と診断された場合
上記精密検査の結果、子宮頸部異形成と診断された場合、子宮頸部異形成の程度により対応が異なります。子宮頸部異形成は軽度、中等度、高度と大きく3段階に分けられます。軽度、中等度異形成は、必ずしも治療を必要とせず、定期的な経過観察で様子を見ることができます。半年に一回の経過観察の中で、自然に軽快、消失することが期待されます。一方、高度の異形成は円錐切除という頸部を部分的に切除する小手術、もしくは子宮摘出にて治療を行うことが推奨されます。このような場合は島根大学病院に紹介させていただきます。
子宮頸癌と診断された場合
子宮頸部異形成を通り越して、子宮頸癌と診断された場合、子宮摘出もしくは放射線治療(もしくは化学療法併用放射線治療)が必要です。進行期(I期、II期、III期、IV期)により治療法が異なります。当科ではMRI,CT検査などを行い、進行期を確定させた上で島根大学病院に紹介させていただきます。

子宮体癌の診断
子宮体癌の検診は子宮の奥にある子宮内膜の細胞診で行います。不正出血などの症状がある患者さんはもちろん、特に症状がない患者さんにも細胞診検査が有用です。子宮頸癌の検診は市町村による公費助成の制度がありますが、子宮体癌の検診は公費助成の検診はないため、自己判断で受けていただくことになります。特に閉経後に不正出血がある方は、子宮体癌のリスクが相当高いですので、検診が強く推奨されます。細胞診は頸部と違い、細胞採取用ブラシを子宮頸部から奥の内膜まで挿入するため、頸部の内腔が狭い場合や、子宮が傾いている場合、挿入に手間取る場合があり、頸部に比べ、やや時間がかかります。婦人科検診に熟練した医師の診察が推奨されます。
細胞診で異常が出た場合、精密検査に移ります。精密検査では、子宮内腔に内膜組織採取のための器具(多くの場合、吸引陰圧で内膜を採取する器具)を挿入し、採取した内膜を病理検査に提出します。約1〜2週間で確定診断結果がでます。

子宮体癌と診断された場合
子宮摘出が原則です。より進行している場合は、抗がん剤による化学療法が必要です。挙児希望の患者さんでは、例外的に子宮温存治療(ホルモン療法)を選択できる場合があります。進行期(I期、II期、III期、IV期)により治療法が異なります。当科ではMRI,CT検査などを行い、進行期を確定させた上で、島根大学病院に紹介させていただきます。子宮温存治療(ホルモン療法)に関しては当科でも対応可能です。
卵巣癌の診断
卵巣癌は子宮頸癌や子宮体癌と異なり、症状が出にくい癌です。早期の患者さんでは、ほとんど症状がありません。卵巣が腟とは交通のない閉鎖空間である腹腔内に存在することが主な理由です。腫瘍が早当大きくなって初めて、圧迫症状としての腹満感、便秘、腰痛、下腹痛などの非特異的な症状を来すことがあります。そのため、発見が遅れ、発見されたときにすでに進行している状態であることが多いのです。
卵巣癌には子宮頸癌のような定期検診が存在しません。また、卵巣癌の約1割の方は遺伝性の癌であると言われています。そのため、親族などに卵巣癌の方がいる、もしくは何らかの症状でおかしいなと感じたら、婦人科を受診していただくことが早期発見、診断の近道です。
卵巣の腫瘍は、子宮がんと違い細胞や組織を採取して診断することができませんが、幸い内診の際に経腟超音波検査を行うことで容易に発見できます。さらに血液検査である腫瘍マーカー検査(CA125、CA19-9など)やCT、MRIなどの画像診断からある程度、良性か悪性かの当たりを付けて治療方針を決定します。治療の基本は手術です。良性の腫瘍でもサイズの大きなものや痛みなどの症状が強いものは手術の対象となります。