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2011.03.09 リハビリ通信

高齢者の食事について

人間の3大欲求といえば、皆さんご存知の通り、食欲・性欲・睡眠欲があげられます。

 

今回はその中で「食べる」ことについて取り上げたいと思います。
食べるという字には、どんな意味があるのでしょうか?ヒントは漢字に隠されています!
答えは、人を良くするという意味。「食べる」とは、単に一日に必要な栄養を口から摂るだけではなく、人を良くする効果があるのです。おいしそうな匂いは嗅覚を、食事を用意している音は聴覚を、盛りつけや食材の彩りは視覚を、おいしいと感じる味覚、舌で味わう食感などさまざまな刺激を脳へ送っています。また、手を伸ばし、口を動かし、食卓で家族との会話を楽しむことで、大脳全体が活発となるのです。
しかし、年をとるにつれ、家族と同じ物は固くて食べにくくなったり、食事の時に咳が出やすくなる等、様々な問題が起こってきます。
 

1.加齢と共に、どんな問題が生じるのでしょうか?

・虫歯などで歯が弱り、噛む力が弱くなる
・入れ歯が合わなくなる
・食べるときに使う筋力が弱くなる
・粘膜の感覚が鈍くなる
・味覚が変わる
・唾液が減る 等…
 

2.ではどんな物が食べにくくなるのでしょうか?

咳が出て飲みにくいという訴えの多い水分について取り上げてみましょう!
水分は流れるスピードが速いため、喉で飲み込む準備ができる前に流れ込んでしまい、気道に入りやすくなります。しかし飲みにくいからといって水分を取らないでいると、慢性的な脱水状態になり、脳梗塞や腎機能障害などさまざまな病気の原因となるため危険です。
 

3.水分を上手に摂る方法はあるのでしょうか?

とろみをつける方法

とろみをつけることでまとまりやすい形状となり、流れるスピードも遅くなるため、喉の準備に間に合います。温かい物には、水溶き片栗粉、コーンスターチ等でとろみをつけることができ、ご家庭でも手軽に試すことができます。温かい物にも、冷たい物にも簡単にとろみが付けられる粉(増粘剤)も販売されていますので、一度お試しいただくのも良いかもしれません。しかし、とろみは加減が難しく、量が多いと喉ごしが悪くなり、風味を損ねることにもなるため、個人個人に合った固さの調節が必要です。
 

食べる時の姿勢調節(写真の様な姿勢が良い)


顎を上げた状態での食事は、喉と気道が一直線になるため、食べ物が気道に入りやすくなります。
言い換えれば、顎を引き、喉と気道に角度をつければ、食べ物が気道に入りにくくなるということです。
軽くうなずいた状態をつくるため、以下の通り姿勢の調節をしてみましょう。高すぎないテーブルを前に、背もたれのある椅子に深く座り、前かがみの姿勢をとりながら、両足のかかとがきちんと床に着いた状態が理想的です。前かがみの姿勢では、口の位置がのどより下になるので、食べ物が勝手にのどに入り込みません。準備ができた時に、自分の意思で飲み込むことができます。
 

温度の工夫

冷たい飲み物は、のどの粘膜に触れた時、飲み込みを誘発しやすいため、咳が出にくくなります。(氷水等)
 

息を止めて飲む方法

私達は、食べ物がのどを通る時、自然と飲み込むタイミングに合わせて、息を止めています。飲み込む時に、一瞬だけ呼吸を止めて、気道にフタをするので、食べ物がうまく食道に誘導されます。方法は、食べ物を飲み込む前に息を吸い、息を止めて飲み込み、勢いをよく息を吐き出すというものです。
 

以上、水分を上手に採る方法についてお伝えしました。効果のある方法を選んで、またはくみ合わせる等して、お試しいただけたらと思います。

食事の事に関して、何かお困りの事がございましたら、一度、医師や言語聴覚士などに相談してみて下さい。

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