益田市医師会

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HEALTH INFORMATION医師会からの健康情報

2000.08.18

異物について

患者さんとしては普通正しいと思われていることでも、耳鼻科医からすると本当に困ってしまうといった場合があります。身近な“異物”についてお話します。
 

のどに骨がささったらご飯の丸呑み?


魚を食べていてノドに骨が刺さった経験は誰にもあることでしょう。
鮎、うなぎ、ししゃも、などは骨も小さく、さほど問題はないのですが、これが鯛、ぶり、鯖となると困ったものです。取り除こうといろいろ手を尽くし、ご飯の丸呑みもしっかり行った後で受診された場合は背中に冷や汗を感じます。骨やえらは、口蓋扁桃、舌根部にひっかかることが多く、これだと口をあけてもらえば割と簡単に取り除けるのですが、ご飯の丸呑みにより、下咽頭といわれる食道直前の部位や、食道の入り口に再び落ちてひっかかった場合はしっかり刺さってしまい、まず自然にははずれません。
 

外来でとるには非常に困難で、一般には全身麻酔をかけて行います。しかし、ご飯の丸呑みをした場合は消化管にご飯が残っており数時間は麻酔をかけることができません。さらに20~40Cmの金属の管を口から押し込み、下咽頭や食道を開きながら骨を探し特殊な器具で挟んで取り除きますが、骨の発見や除去操作が非常に難しくなります。また鯛の骨が食道に刺さった場合や、それを放っておいた場合、食道に穴があくことがあり命にかかわることになります。
 

たかが魚の骨くらいと簡単に考えていると大変です。ひっかかった場合はご飯など飲み込まず何もしないですぐ耳鼻科を受診するほうが賢明でしょう。
 

子供にはピーナッツはたべさせない?


子供の気管の異物として最も多いのが豆類といわれています。
丸まま又は噛み砕かれた小片が何かの拍子に吸い込こまれ、気管、気管支に入り込むと、原因不明の微熱を伴う咳が長く続いたり、重篤な場合は、急激な呼吸障害で死に至ります。
 

子供は、飲み込みと呼吸をすばやく切り替えることがへたです。そして何かに夢中になりやすく、口にものを入れていることをすぐ忘れます。また突然泣き出しやすく、泣きじゃくりを続けます。このため気管、気管支へ物を吸い込みやすくなります。豆類に限らず、ビスケットのような粉状になる食べ物を受診前、機嫌を取るために与えているお母さんがおられますが、診察中は泣くことが多く息を吸い込んだとき気管内に入り、同じことが起こります。
 

豆類の中でも特に困るのがピーナッツで、水気を含んで膨れ、取ろうとしても崩れやすく、さらに油成分や塩気をふくんでいるため、気管支の粘膜が炎症を起こして腫れ易く、気道はますます閉塞させられることになります。大人でも飲みすぎの状態で、大声で話しながらつまみのピーナッツを口に放り込むのは要注意です。
 

食道に引っ掛ける異物で子供に多いものはコインでとくに十円玉は要注意、外国ではフライドチキンの骨なども言われます。
私が耳鼻科医になった頃、先輩の先生に、”子供には、ピーナッツとフライドチキンは小学校にあがるまでは与えるな”と教えられたものでした。
 

耳に虫が入ったら明るい方に耳を向ける?


夏になると外耳道疾患が増えます。なかでも外耳道に蚊、蛾、コガネムシ、蟻、などの虫類が入り込むことがあります。
これらは明るいほうへ耳を向けると割と出て行ってくれます。しかし大型のものはそうはいきません。耳の中で方向転換ができず、出ようともがくためかえって痛みは増します。
 

しかし最近では冷房により窓を開けなくなったため、また窓サッシの普及によりこれらの虫の被害は減っております。ところがこれに代わってふえてきたのがゴキブリの侵入です。これは明るいほうへ耳を向けると嫌がり、逆に耳の奥へ奥へと入っていきます。水攻めで殺そうとしても死ぬどころか暴れだすため、人の方が死ぬほどの痛みを受けることになります。
 

治療としてオリーブ油やアルコールを入れ、虫を殺す方法もありますが、前述のように虫が死ぬまで時間がかかり、その間の痛みは耐えられません。また薬液によっては、外耳道や鼓膜に刺激性のものもあり、現在では医院で8%キシロカインスプレーを1~2回スプレーしてもらうと瞬時に殺虫でき有効だと思います。死んだ虫は忘れず除去してもらっておきましょう。
 

一方海水浴のシーズンでもあります。耳に砂が入り頭を振り回している方もおられるでしょう。こんな場合は耳掻きや綿棒で取ろうとせず、砂の入った耳を下に向けたまま、ぬるま湯のシャワーを耳にやさしく注いでみてください。砂が出てきます。冷たい水や40℃以上の湯ではめまいをおこすことがありますからくれぐれもぬるま湯にしてください。
また海水浴の耳栓として噛みかけのガムを入れるのは止めて下さい。体温で非常に軟らかくなったガムは、外耳に付いてなかなか取れません。それにその成分のためか外耳がかぶれ炎症を起こしやすいように思われます。
 

文責 神崎耳鼻咽喉科院長 神崎 裕士

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