益田市医師会

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HEALTH INFORMATION医師会からの健康情報

2005.05.17

インターフェロンは怖い?効かない?

はじめに

皆さんは「C型肝炎ウイルス」という言葉を耳にされたことがあると思います。C型肝炎ウイルスに持続感染している人は100万~200万人と推定されていて、もはや国民病とも言うべき状況です。C型肝炎ウイルスが持続的に肝臓に障害を起こす病気を「C型慢性肝炎」と言います。C型慢性肝炎は治療しないと10~30年後に肝硬変や肝癌に移行しやすいと言われています。従って、何らかの治療が不可欠になってきます。最近、C型慢性肝炎に対する新しい治療薬が出ていて、かなりの効果を上げてきているので、今回ここでご紹介したいと思います。
 

C型慢性肝炎の治療

C型慢性肝炎が完全に治癒するためには、C型肝炎ウイルスを体内から排除することが必要になってきますが、それは「インターフェロン療法」でのみ可能です。インターフェロンはもともと私達が体の中に持っているタンパク質です。ウイルスが増えるのを抑える働きを持っています。これを薬として応用したのがインターフェロン製剤です。このインターフェロン療法に、最近、新しい薬が加わってきました。
 

インターフェロン療法

皆さんは、「インターフェロン」という言葉を耳にされたことがおありでしょうか?おありの方はどのようなイメージをお持ちでしょうか?残念ながらあまりいいイメージはないかも知れません。長期間打たないといけない。副作用が強い。そして、それだけ苦労しても効かないことがある・・・・。いずれも全く間違いとは言えず、この治療は投与を受ける患者様に多大な苦労を強いるものです。ただ、新しい薬の出現で、改善された点も出て来ました。
 

投与の期間は半年から1年です。これは、投与された総量に、ウイルスが消える確率が左右されるとの報告が多いからです。ただ、従来のインターフェロンは週3回打たなくてはいけませんでしたが、新しく出た薬は週1回の投与でよくなりました。長く血液中にとどまり、安定した血中濃度を保つため1週間効果が持続するのです。従って、注射を打つことで出現していた副作用も頻度が少なくてすみます。
 

新しい薬の効果


最も強調したいのがその効果です。インターフェロンの効果は、患者様が持っているウイルスの量と種類に左右されます。ウイルスの量が多いほどインターフェロンで完全に消してしまうのは難しいです。また、C型肝炎ウイルスは大きく分けてタイプ1と2の二つの種類があるのですが、タイプ1の方がインターフェロンは効きにくいです。日本人の持っているC型肝炎ウイルスは、残念ながら7割がタイプ1と言われています。昔は、悪い条件(タイプ1で、ウイルス量が多い)の患者様にインターフェロンを投与しても、完全にウイルスが消えるのは5~8%の患者様だけでした。20人に1人!長期間副作用で苦しんだ末の確率にしては、あまりに悲しい数字です。なので、一時はタイプ1で、ウイルス量が多い患者様へはインターフェロン療法を見合わせていた時期もあったほどです。
ですが!今回出た新しい薬は、悪い条件の患者様でも60%以上の確率で完全治癒=ウイルスが体内から消える、と報告されています。また、他の調査では、過去にインターフェロン療法を行い、一旦は落ち着いたと思われた肝炎がまた悪くなった患者様にこの新しい薬を使うと、80%以上の確率で完全治癒したとも報告されているのです。
60%!80%!C型慢性肝炎の方で、「インターフェロンは怖い」「インターフェロンは効かない」「インターフェロンはやったが、しんどかった上に効かなかった」などの思いを抱いておられる患者様、少し考えを変えて頂いていい時期ではないかと思っています。
 

最後に

どうしてC型慢性肝炎の完全治癒を目指したいかと言えば、肝臓癌を減らしたいからです。ツルツルぴかぴかの肝臓に癌はほとんど出来ません。肝臓癌の9割がB型あるいはC型肝炎ウイルスに蝕まれた肝臓に出来るのです。肝炎ウイルスを排除することは肝臓癌を排除することに直結し、そしてそれは患者様の健康な老後に直結するのです。
今回出た新しい薬についてはいくつか条件があります。C型慢性肝炎の患者様は、自分にこの薬を使えるかどうか、かかりつけの先生に問い合わせてみて下さい。そして、条件が合ったなら、ぜひ明るい明日への一歩を踏み出してほしいと思います。
 

ニュース

C型肝炎の総合対策を見直す厚生労働省の専門家会議(座長・高久史麿(たかく・ふみまろ)自治医大学長)の初会合が開かれ、ウイルス検査の受診率向上や最新の治療法の実施体制整備などを検討し、7月にも結果を取りまとめることを決めた。
C型肝炎ウイルスに持続感染している人は100万~200万人と推定され、肝硬変や肝がんへの進行も問題になっている。
会議の冒頭で尾辻秀久(おつじ・ひでひさ)厚労相が「国民病とも言うべき状況」とあいさつ。委員からは、新たな抗ウイルス薬や併用療法など効果的な治療法について「全国的に同じレベルで実施できる体制を」「通常生活で予防は可能なので、感染者を対策の中心に」などの意見が出た。
同省は、ウイルスの感染を拡大したとされる血液製剤フィブリノゲンの納入先医療機関公表(昨年12月)でC型肝炎への関心が高まっていること、現行の総合対策実施から3年近くが経過したことで見直しを決めた。

昨年12月、「C型肝炎ウイルス」が大きな話題になったことをご記憶でしょうか?このウイルスの感染が拡大した原因の一つとされる血液製剤フィブリノゲンの納入先医療機関が公表された、というニュースです。

 

C型慢性肝炎の治療は、大きく分けて2つあります。一つは「肝庇護療法」と言われるものです。C型慢性肝炎とは持続的に肝臓細胞が壊れる病気です。(壊れては治り、を繰り返すうちにだんだん治りにくくなり、とうとう治らなくなるのが肝硬変。壊れては治り、を繰り返すうちに突然変異が起きて変化した細胞が出現してくるのが肝癌です。)肝臓細胞が壊れるのをくい止めるのが肝庇護療法です。この治療は、肝炎が進行するのをある程度防いでくれますが、肝炎を起こしている直接の原因=ウイルスを排除する治療ではないので、残念ながら肝炎が完治するわけではありません。
 

文責 医師会病院 内科 新垣 美佐

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