よいとまけの心 

少し前になりますが、美輪明宏さんの訃報に接しました。

昭和、平成、令和という三つの時代を生き抜き、その独特の感性と言葉で、多くの人々に勇気や希望、そして「愛」の大切さを伝え続けた偉大な芸術家でした。

訃報に触れたとき、真っ先に思い浮かんだのは『ヨイトマケの唄』でした。

実は私は子どもの頃、父が家を新築した際、地固めのために「よいとまけ」をする姿を見ています。何人もの人が綱を握り、声を掛け合いながら重い槌を引き上げ、一斉に落として地面を固める。

おとうちゃんのためなら エンヤコラ
おかあちゃんのためなら エンヤコラ
もうひとつおまけに エンヤコラ

この歌は、単なる労働歌ではありません。家族を思い、仲間を思い、力を合わせて未来の土台を築く、人間の尊さを唄ったのだと思います。

私は、ヨイトマケの唄を思い出して、この「よいとまけ」の精神は、今の益田市医師会にも通じるものがあると思います。

医師会病院、くにさき苑、石見高等看護学院、そして地域で診療にあたる会員の先生方。それぞれが役割は違っても、目指すものは一つです。

一人では持ち上げられない重い槌も、多くの人が息を合わせれば持ち上げることができます。地域医療もまた同じです。誰か一人の力ではなく、それぞれが綱を握り、心を一つにして初めて、地域医療という大地をしっかりと支えることができます。

美輪明宏さんは、自らの肉筆で最後にこう書き残されました。

「愛があれば戦争なんかおこりません。」

この言葉が、今なお世界のどこかで戦火に苦しむ人々を前に、為政者の心にも届いてほしいと願わずにはいられません。

地域医療もまた、「愛」が原点です。

患者さんを思う心、仲間を思う心、家族を思う心、地域を思う心。それが、地域医療を支える確かな土台になります。

これからも私たちは、よいとまけの心を忘れることなく、互いに力を合わせ、地域の皆さまが安心して暮らせる地域づくりに努めてまいります。

公益社団法人 益田市医師会 会長 大畑 力

※上記はイメージ画像です